2022.07.19
1頭の羊ちゃんが、ウールになるまで大変なんです!!
羊さんから、毛糸になるまで大変なんです!
さて、今回は真冬に大活躍の素材、ウールのお話です。
人間と羊の歴史はとっても古く、約1万年前の新石器時代に中央アジアで家畜として飼育されていた事が始まりと言われています。
当時は、羊の毛皮をそのまま敷物や防寒用として使用していたそうですが、紀元前18~17世紀のバビロン王朝時代からは衣服として使用され、その後、ペルシャ、エジプト、ローマを経て、ヨーロッパ全域に広がりました。
現在では、世界中で飼育されている羊の数は約11億頭弱もいて、その産毛量は洗い上げベースで150万トン強もあり、全世界で生産される総ての繊維の3%を占めているそうです。
なんと、羊の仲間は3,000種類もいるんですよ!!\(◎o◎)/!
ウールとは一般的にメリノ種の羊の毛のことを言って、オーストラリア、ニュージーランド、フランス・メリノがあります。
中でもオーストラリアでは生産量の約75%がメリノ種で、ウール市場の約30%を占めており、世界最大の産出国なんです!
また、毛には羊毛(Wool)の他に獣毛(Hair)があります。
獣毛は独特の肌触りや光沢を持っていますよね。
よく聞く、カシミヤ、モヘア、アンゴラ、アルパカなどはヘアーに属するんです。
毛糸になるまでの作業工程
スクスク育った、羊さんは生後1~2年経つと、毎年春頃には毛刈りが行われるそうです。
よくテレビで見る、体格のいいおじちゃんが足に羊を挟んで、バリカンやハサミを片手にザクザクと。。。
ちなみに1頭の羊さんからは、約4.55キログラムの羊毛が取れるそうです。
じつは丸刈りすると、羊の身体の形のまんまって知ってました?
この原毛の事をフリースというんです。
フリースって聞くと、ユニクロなんかで販売されてる、ポリエステルの衣類のことを思い浮かべる方も多いと思いますが、もともとは羊毛の事を言うんですね。
簡単に毛糸になるまでをまとめるとこんな感じです。(*^_^*)
1)羊毛を選別(選毛)
まずは、刈り取られた羊毛を熟練した人間の目で選別します。
羊毛は他の繊維と異なり、羊の育つ環境や種類の違いで太さ、長さ、不純物の混入など 千差万別なんです。
ラノリン(羊の脂)がたっぷりついた羊毛を見極めるのは、なかなか大変なお仕事ですね!人の手に頼る地味部分ですが、とっても重要な作業なんですよ。
2)羊毛を洗う(スカーリング)
選別されたウールはグループごとに石鹸とソーダで洗われます。ウールに含まれている脂、土、砂を取り除く作業です。
洗い終わったウールは約18%の水分を残して乾燥させます。ここで出来るのが洗い上げ羊毛です。
洗いあがった羊毛は真っ白ツヤツヤで、フリースの時とは大違いですね!
ちなみに、取り除かれた脂はグリースやラノリンに精製されるんです。
3)羊毛をほぐす(カーディング)
大小のふっくらした固まりになっている洗い上げ羊毛に、絡まないように油をかけて、表面に針を植えた大小のローラーを
組み合わせた機械(カード機)に通して行きます。
繊維を1本1本にほぐし、薄い毛の膜を作ります。コレを束ねてロープ状にしていきます。この状態を【スライバー】といいます。
4)羊毛を揃える(コーミング)
スライバーを6~10本ほど、組み合わせて、櫛でけずり(ダブリング)ながら、引き伸ばし(ドラフト)ていきます。
ダブリングとドラフトを繰り返して、徐々に繊維を平行に並べ、均一の太さのスライバーにしていくんですね。
次にコーマー機という細かいたくさんの櫛を持った機械にかけながら、短い繊維や植物性の不純物などを取り除き、繊維が綺麗に揃った美しいスライバーを作っていきます。
これを巻き上げたものを【ウールトップ】といいます。
ここまでが、糸にする中間工程です。この状態で染色されたものがトップ染めといわれるものなんですよ。
5)糸紡ぎの準備(前紡)
ウールトップのスライバーは1mあたり、25グラム程度の太さで、赤ちゃんの腕ぐらいと同じ太さなんですよ。
またまた、ダブリングとドラフトを繰り返して箸の太さほどに引き伸ばしていきます。
6)糸を紡ぐ(精紡)
ここまで細くしたら、ようやく糸を紡ぐ【精紡機】にかけられます。
精紡機の芯には1分間に1万回転以上もまわる、スピンドルがあり、糸の太さまで引き伸ばすとともに、撚りをかけて糸を紡いでいきます。巻き取った糸は単糸といわれます。
7)撚りをかける(合糸・撚糸)
単糸にかけられた撚りをセットするために、糸蒸し加工を行い、さらに2本を組み合わせて、もう一度逆の方向に撚りをかけて【双糸】にします。これで梳毛糸作りの作業は完了し、染められたり、織物になっていきます。
羊から刈り取られたウールは、いくつもの製造工程を得て、やっと毛糸になっていくんですね。
ウールの特徴知ってますか?
お家でウール100%のセーターをお洗濯される方も多いと思います。でも、「縮んでしまった!」という経験ありませんか?
これって、ウールの特徴のスケールに大きく関係してくるんですよ。
ウールの毛の一本一本は、髪の毛と同じキューティクルといわれるうろこのような鱗片で覆われています。
この、キューティクルが水分を含むと広がり、揉まれたりすると、スケール同士が絡み合って、フェルトのようになって、縮んでしまうんです。
セーターだと、脇の部分などはフェルト化している衣類をよく見かけますね。
フェルト化してしまうと、どぉ頑張っても元には戻らないので、注意してくださいね。
最近では、ウォッシャブルウールといわれる、水洗いできる衣類も登場しました。
これは、毛糸の良さを損なわない程度に、スケールを溶かしたり、樹脂で埋めたり、した防縮加工を施したものなんですよ。
ウールの特徴
・吸湿性が良いので、冬は暖かく、夏は涼しい。
・染色性がよく、いろんな色に染まります。
・燃えにくいので、航空機やインテリアなどにも使用されています。
・弾力性に優れ、シワになっても、蒸気を当てるとすぐに戻ります。
たくさんの人の手が加わった、ウール衣類。だんだん愛着が沸いてきませんか??